カテゴリー「脳梗塞 臨床 (初学者)」の記事

2007年9月 7日 (金)

脳梗塞とは

脳梗塞は、脳へ供給する動脈に閉塞もしくは高度狭窄が生じ、脳循環(脳血流)が低下した結果、脳細胞(神経細胞やグリア)の機能低下とそれにつづく壊死をきたした状態です。まだ壊死に陥っていない機能低下の状態で血流の再開通が得られると、可逆的で、非可逆的な壊死に陥らないことがありますが、再開通が得られなければ壊死に陥り、機能を失います。可逆的な可能性があるのは少なくとも閉塞から3時間以内(多くはそれよりも短い)と考えられています。梗塞の症状は動脈の閉塞部位によって神経症状やその重篤さが異なります。

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脳卒中とは?

「脳卒中(のうそっちゅう)」とは、脳梗塞のみならず、脳出血(脳実質内出血)や、くも膜下出血などを含み、発症により急性の局所神経障害をきたす脳血管障害の総称です。したがって救急来院時や初診時に「脳卒中の疑い」という診断はあっても、最終的な臨床診断名や画像診断名に「脳卒中」を使うことはありません。ちなみに「中る」は「あたる」です。脳卒中の医学英語訳はstrokeです。

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脳卒中のタイプ

  1. 脳出血
  2. くも膜下出血
  3. 脳動静脈奇形に合併する頭蓋内出血
  4. 脳梗塞

NINDS (National Institute of Neurological  Disorders and Strokes)第III版の診断基準

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脳梗塞の分類

「classification_of_ninds_cvd_iii.ppt」をダウンロード

機序

  1. 血栓性 thrombotic
  2. 塞栓性 embolic
  3. 血行力学的 hemodynamic

臨床的カテゴリー

  1. アテローム血栓性脳梗塞 atherothrombotic infarction (ATI)
  2. 心原性脳塞栓症 cardioembolic
  3. ラクナ梗塞 lacunar
  4. その他

NINDS第III版の診断基準に基づく

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脳梗塞と脳虚血

脳血管障害は虚血性(または閉塞性)と出血性に大別されます。

  1. 虚血性 動脈狭窄や閉塞により血流の低下→脳組織障害
  2. 出血性 動脈の破綻により脳実質内やくも膜下腔に血流の動脈外漏出→頭蓋内血腫形成

出血性の脳血管障害としては脳実質内出血とくも膜下出血があります。

虚血性脳血管障害 ≒ 脳梗塞 で、両者の使い分けに明確な定義はありませんが、

  • 「脳梗塞」はすでに完成された非可逆的脳組織障害の意味で使われ、
  • 「脳虚血」はまだ非可逆的な組織壊死に陥らない段階の、軽度の血流低下状態(脳細胞は正常機能もしくは機能低下状態)や、発症直後で血流再開により可逆的な可能性があるような状態に用いられることが多いようです(たとえば「脳虚血超急性期」のように)

脳梗塞の医学英語訳はcerebral infarction もしくは brain infarctionですが、ischemic strokeも同義です(ischemia = 虚血、stroke = 脳卒中). 英語論文ではischemic strokeもよく使われるので、文献検索のときのkey wordsには"infarction" だけではなく、"ischemic stroke" も加える必要があります。

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脳梗塞の臨床分類

NINDS CVDIIIの分類に基づいて、さらに臨床病型と発症機序をくみあわせて

  1. 心原性塞栓症
  2. 動脈原性塞栓症
  3. アテローム血栓性梗塞
  4. 血行力学的、境界領域梗塞
  5. ラクナ梗塞
  6. 分枝粥腫型梗塞

などに分類される。

「Classification of_cerebral_infarct.ppt」をダウンロード

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2007年9月11日 (火)

超急性期脳虚血の画像診断:目的

画像診断は発症後、来院後すみやかに施行するようにする。治療開始の律速段階にならないように注意する

  1. 非可逆的な組織障害の検出early CT sign, 拡散画像
  2. 動脈閉塞部位の診断MRA, T2WI, FLAIR, T2*WI, (hyperdense sign)
  3. 灌流異常領域の検出CT造影灌流画像MR造影灌流画像
  4. 病型の診断:虚血の進展範囲、発症時間との関係、発症様式、背景因子などから

       青字はMR,赤字はCT、( )内は鋭敏度、特異度の低い所見

  • 1.2からdiffusion (or early sign)-perfusion mismatchの存在を推測
  • 1.3からdiffusion (or early sign)-perfusion mismatchを評価→ischemic penumbra

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脳動脈の解剖 1

脳梗塞は脳組織へ血流を供給する脳動脈の閉塞によって生じ、梗塞の進展範囲は動脈閉塞部位よりも末梢の支配域に生じます。したがって脳梗塞の局在を表すのに、解剖用語での表記のみならず、閉塞動脈の動脈支配による表記が求められます(例、基底核に→中大脳動脈外側線条体動脈領域に、内包後脚に→前脈絡動脈領域に)。さらに、機能解剖を考えた、局在表記も必要になります(例、皮質脊髄路にかかる)。逆に動脈支配域に一致しない病変の進展は梗塞以外の病変を鑑別疾患に考える必要があります。

閉塞動脈の診断はCTやMRで行われます。以前のように診断だけの目的で血管造影(DSA)を施行する機会は少なくなり末梢枝までひとつひとつの動脈の名前を覚える必要はありませんが、基本的な脳動脈の解剖を理解しておく必要があります。

頭蓋内の動脈を理解するには大動脈からの解剖を理解する必要があります。まずは左右の総頸動脈、椎骨動脈について復習します。

  1. 上行大動脈から大動脈弓の第1の分岐として右腕頭動脈brachiocephalic trunk((または無名動脈innominate trunk)が分岐する。右腕頭動脈から右総頸動脈common carotid arteryが分岐する。右総頸動脈分岐後は右鎖骨下動脈subclavian a.となり、直後に右椎骨動脈vertebral a.を分岐する。右鎖骨下動脈は右上腕動脈に連続する。
  2. 大動脈弓の第2の分岐として左総頸動脈を分岐する。
  3. 大動脈弓の第3の分岐として左鎖骨下動脈を分岐する。その直後で、左椎骨動脈を分岐する。

総頸動脈は頚椎C4-C2高位で内頸動脈internal carotid a.外頸動脈external carotid a.に分岐する。内頸動脈は主に頭蓋内、外頸動脈は主に頭蓋外と頭蓋内硬膜に供給する。

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脳動脈の解剖2:前方循環系と後方循環系

脳梗塞における脳動脈の解剖を勉強するときに1.前方循環系と2.後方循環系にわけて考えると病型や病変の進行、神経症状などを考えるときに便利です。

1.前方循環系 anterior circulation (内頸動脈系)

  • 内頸動脈:主要分枝→眼動脈、後交通動脈(→後大脳動脈)、前脈絡動脈
  • 中大脳動脈middle cerebral a. :主要な穿通枝として外側線条体動脈
  • 前大脳動脈anterior cerebral a.
  • (後大脳動脈、(内頸動脈から後交通動脈を介して供給する場合)

2.後方循環系 posterior circulation (椎骨脳底動脈系)

  • 椎骨動脈vertebral a.:→後下小脳動脈
  • 脳底動脈basilar a.:→前下小脳動脈、上小脳動脈
  • 後大脳動脈posterior cerebral a.

「classification_of_cerebral_arteries1.ppt」をダウンロード

「classification_of_cerebral_arteries_2.ppt」をダウンロード

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脳虚血超急性期のMRプロトコールの一例

荏原病院放射線科における脳虚血超急性期のMR撮像の目的とプロトコールを示します。

1.緊急MRの目的と方針

  • 脳虚血による組織障害の早期検出(拡散画像)
  • 主幹部、皮質枝の閉塞の有無、閉塞部位の同定、灌流異常域の推定(FLAIR, MRA, SWI,  T2*WIなど)
  • 灌流状態の精査(造影灌流画像、SWIなど)
  • できるだけ速やかに検査を遂行する。とくにtPA血栓溶解療法の適応が考えられるときは、CT,MRのうち、早期に対応できるほうから施行する。MR検査が治療開始の律側段階にならないようにする。

2.緊急MRプロトコール例 (1.5-T装置)

  • 拡散強調画像、ADC画像 (SE-EPI, b=1000):細胞性浮腫(非可逆的組織障害)の早期検出
  • FLAIR : 皮質枝の描出(intraarterial signal, IA sign) →灌流異常域の推定。くも膜下出血の検出
  • T2強調画像: 陳旧性梗塞の検出、超急性期血腫の検出、内頚動脈閉塞の診断
  • MRA: 主幹部閉塞、再開通の有無、Willis動脈輪形態と側副血行の可能性

さらにFLAIRでintraarterial signalが認められ、灌流異常の存在とdiffusion-perfusion mismatchが予測されるとき

  • 造影灌流画像: TTP, MTT, rCBV, rCBFを評価

このほか、時間猶予があるときにSWIを施行、また多施設研究のためにT2*WIを、脳腫瘍などとの鑑別を要するときはMR spectroscopyを、動脈解離を診断するときは造影MRA(元画像による評価)などを施行する。

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