カテゴリー「磁気共鳴(MR) 原理と基礎」の記事

2007年9月13日 (木)

磁化の振る舞い:励起と緩和

Spin Echo (SE) 法における磁化の振る舞いと励起、緩和について

90°励起パルス-180°収束パルスをによってMR信号を収集するSE法は、MRIの標準的な撮像法です。T1強調画像、プロトン密度強調画像、T2強調画像が得られる(プロトン密度強調画像とT2強調画像には高速SE法(fast spin echo; FSE)を用いますが、その基本はSE法です)。スピンの挙動と緩和過程を交えて順に説明します。

  1. MRの静磁場内ではスピンは静磁場の方向(z軸方向;Mz)に配列します。外磁場のない状態ではそれぞれのスピンは等方向的に分散していますが、静磁場下ではz軸方向に偏った分布となり、z軸周囲をwで回転しています。M0はすべてのスピンの総和を巨視的磁化として表したものです)。

  2. 同じ周波数をもった90°RFパルスを照射すると、スピンの横磁化成分を生成されます(励起, excitation)。90°RFパルス照射遮断直後から、縦磁化成分の指数関数的な回復と横磁化成分の減衰が生じます(緩和relaxation)。縦磁化成分の緩和が縦緩和もしくはT1緩和、横磁化成分の緩和が横緩和もしくはT2緩和です。この縦緩和と横緩和はそれぞれ組織特有の値です。緩和時間の差異が画像コントラストに反映されます。

  3. 90°パルス照射直後から時間t後の縦緩和成分Mzは、Mz(t) = M0(1-e-t/T1) となり、経時的に縦緩和の回復曲線としてあらわすことができます。

  4. 横緩和成分MxyはMxy(t) = M0 e-t/T2 となりこの横磁化の減少する過程は縦磁化の回復と同時に起きるが独立した現象です。横緩和の起序としては局所磁場(外部磁場)の不均一とスピン-スピン相互作用の二つがあります。

  5. 90°RFパルス照射遮断直後から、横磁化成分から自由減衰(free induction decay; FID)信号が生成される。FID信号はT2*減衰を示します(→GRE法)。この緩和過程においてスピンの分散する横緩和の位相を収束させてMR信号(エコー)を生成します。SEではTE/2後に180°収束パルス(refocusing pulse)を照射し、分散したスピンを反転させて位相を再収束させ、90 °パルスからTE後にSE信号をえます。

  6. SE信号は90°励起パルスと180°収束パルスの両方を印加されていないと発生しません。流速をもつ物質がTE後に撮像面内から流出していると信号が出現しません。これがflow voidで、撮像面に直交する内頸動脈内腔などに認められます。

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2007年9月14日 (金)

MRで測定される拡散とは

物理でいう拡散とは
  • 巨視的な拡散:濃度勾配が定常状態へ移る過程
    物質粒子は総体的に濃度の高い方から低い方へ
    単位時間あたりの物質の移動量は濃度勾配に比
  • Fickの法則:移動∝濃度勾配
    MRで測定される拡散とは
    • 微視的拡散 ≒ ブラウン運動
    • 周囲の熱的揺動による水分子の動き
    • 非常に短い時間に連続的、不規則で乱雑(self-diffusion random walk )
    • 微視的 10 – 100 mm 

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    MRによる拡散測定の原理

    • Spin echo型EPI
    • 180°位相収束パルスの前後に対称的なMPGパルスを等時感覚に印加
    • MPG:motion probing gradients
    1. 静止しているプロトン→位置移動がないので、MPGの大きさが同じで位相変化が打ち消される→信号は低下しない
    2. 拡散(位置移動)しているプロトン:位置移動→受けるMPGの大きさが異なる→位相が乱れる→信号低下
    • 拡散はT2やT1、プロトン密度とは独立したパラメータである。
    • 組織成分や組織構築といった微細な生体環境を反映する。

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    拡散:MPGによる位相変化

    MPGによる位相変化について考えます。

    ラーモア式をもう一度確認します。

    ω = γ・B0

    • γ:磁気回転比、B0:静磁場
    • プロトンは静磁場B0内部ではラーモア式に比例した角周波数ωで回転する。
    • また、位相変化はΦ= ωt になります。

    z軸方向にMPGパルスを印加すると

    ω = γ・(B0+Gz

    角周波数は時間(位置)で変化するので、位相変化は周波数変化の時間積分になります。

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    拡散画像:b値 b-value

    拡散強調のためのMPG (motion probing gradients) の強さ    

    • 単位 sec/mm2

    MPG印加→拡散プロトンの位相が分散

    • MPG印加時間が大きいと拡散プロトンの信号強度は低下

    大きなb値のMPG印加 → 灌流の影響が減少

    • 真の拡散を強調
    • b = 400-500 sec/mm2 以上で灌流の影響が無くなり、拡散強調画像が得られる。
    • 脳組織の拡散評価には b = 1000-1200 sec/mm2 程度を用いる。

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    2007年9月19日 (水)

    ADC 1

    みかけの拡散係数 apparent diffusion coefficient

    (作成中)

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    2008年8月31日 (日)

    ラーモアの方程式

    原子核(臨床MRではプロトン、すなわち水素の原子核)の共鳴周波数(角周波数、線周波数)は静磁場強度(磁束密度)に比例する。核磁気共鳴法(nuclear magnetic resonanceNMR)の基本となる式であるし、SWIの原理の理解にも必須となる。

    w = 2pn = gB              式(1)

    w: 角周波数 (rad /sec), n: 線周波数 (Hz = cycle/sec) g: 回転磁気比 (Hz/T), B: 静磁場強度 (T)

    回転磁気比 (gyomagnetic ratio)は原子核種に固有の値で、プロトンのg42.6 MHz/Tである。

    静磁場1.5-Tの共鳴(線)周波数n1.542.6(MHz/T) x 1.5 (T) = 63.9 (MHz) 、共鳴角周波数w1.563.9 x 2p (Mrad / T)となる (M106)

    3.0-Tの共鳴(線)周波数n3.042.6(MHz/T) x 3.0 (T) = 127.8 (MHz) 、共鳴角周波数w3.0127.8 x 2p (Mrad / T)となる。

    核磁気共鳴法は物質の磁性や化学結合の違いから生じるわずかな局所磁場(B)の変化による共鳴周波数の差異を利用するものである。たとえば同じ原子核でも分子構造によって生じる電子雲(電子の流れ)による磁場遮蔽による局所磁場の変化による共鳴周波数の差異が化学シフトである[ w = g(B-s], s:遮蔽定数]。臨床ではMR spectroscopyや脂肪抑制法に応用される。

    また静磁場環境に勾配磁場を印加することで拡散情報や流れの情報を得たり、位置情報を付与する[ w = g(B+G], G:勾配磁場強度]

    静磁場環境に真空以外お物質がさらされると内部に磁化が生じる。これが磁化率変化である[ w = mB, m透磁率]

    さらにMR画像のコントラストにはT1緩和やT2緩和といった低エネルギー現象を利用する。

          

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    T2*とT2

    90°励起パルス直後からMxyは減衰し自由減衰信号(Free induction decay; FID)が生成される(図4)。FID信号はT2*減衰を示す(e-t/T2*)。T2*減衰は外部磁場の不均一性による。GRE法T2*強調画像は磁化率変化に鋭敏である。

    一方SE法では、TE1 /2時間後に180°収束パルス(refocusing pulse)をかけると、分散したスピンの位相が再収束し、そのTE1 /2時間後(90 °励起パルスからTE1後)に第1エコー(MR信号)が得られる。マルチプルエコー法ではさらにある時間後(TE2 /2)に180°反転パルスを照射すると、第2の180°パルスからTE2 後、90°パルスからはTE1 + TE2 ( = 2nd TE)後に位相が再収束し第2エコーが得られる。

    T2減衰曲線はスピン-スピン相互作用による位相分散による信号減衰である(e-t/T2)。T2*減衰はT2減衰よりも速く進行する。180°収束パルスによって、スピン外部の磁場環境(局所磁場磁場の不均一)による位相分散は(T2*減衰)は補正できるが、T2減衰、スピン-スピン相互作用(隣接するスピン間の微小な局所磁場)は180°収束パルスでも補正できない。

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    磁化率とは

    真空中の磁束密度(B)と磁場(H)強度は以下で表すことができる。

                  B = m0 H                   式(3

    m0: 真空透磁率

    CGS単位系ではm0 = 1なので真空中では磁束密度(B) = 磁場強度(H)である(m0は単位を揃えるための係数、MKS単位系では2p×10-7。以下の磁化率の説明ではMKS単位系で表記する)。静磁場の中に置かれた物質は磁化される。すべての物質が磁性体で、静磁場に晒された物質内部には2次的に磁場(Mが誘導され磁場強度に変化が生じる(図2)。

    B = m m0 H                  式(4

    ここでmは透磁率magnetic permeabilityで、物質の磁化される程度を表す。また静磁場中に置かれた物質の磁束密度は真空中の磁束密度と物質内に誘導された磁化Mの和となる。

                  B = m0 H + M          式(5

    磁化率とは静磁場に対する物質の磁化の割合で、磁化率k は内部磁化Mを外部磁場(静磁場)で除した値である.

    k = M / m0H,                   式(6

    B = m0 H + k m0H m0 (1+k) H        式(7)

    すなわちMKS単位系では透磁率は1+磁化率(k)となるCGS単位系では1 + 4pc)。

    静磁場の磁束密度とはわずかに反対方向に磁化される性質をもつ物質(負の磁化率)が反磁性物質dimagnetismである。反磁性では磁力線をわずかに分散させ負の磁化として働くがその影響は小さく、実際は非磁性である。ほとんどすべての生体物質が反磁性を示す。一方、外部磁場の方向に磁化される物質(正の磁化率)が常磁性物質paramagnetismである(常磁性の磁化Mの絶対値は反磁性物質の磁化の絶対値よりは大きい)。常磁性は磁力線を集束し正の内部磁化を誘導し、局所磁場を増強させる。生体内ではFe2+ (デオキシヘモグロビン)、Fe3+ (メトヘモグロビン、ヘモジデリン)、メラニンなどがある。Gd3+も常磁性物質で緩和時間の短縮をきたす。

    磁化率により局所磁場に変化を生じると共鳴周波数に変化をきたし[ w = g (mH) ]位相差となって現れる[ wt = g (mH) t]位相変は局所磁場の変化とエコー時間に比例する。単一の物質内では位相情報は画像コントラストに反映されないが、voxel内に磁化率の異なる物質が存在すると反対方向を向いた位相は相互に打ち消すため信号が減衰する。同一voxel内に水と脂肪が存在しているときに生じるエコー時間によって2者の位相が揃ったときには信号が増強し(同位相, in-phase)、反対方向に向いたときに信号は低下する(out-of-phase)。

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    2008年11月20日 (木)

    Susceptibility-weighted imaging (SWI) の原理と臨床

    「swi_vol1.doc」をダウンロード

    「swi_vol2.doc」をダウンロード

    Susceptibility-weighted imaging (SWI)Haackeらによって提唱された新しいMR撮像法で磁化率変化を強調した画像である[1,2]。直訳すると「磁化率強調」法であるが,本邦では日本語表記ではなく「SWI」で浸透してきている。SWIは単に磁化率効果によるT2*信号減衰を画像化したものではなく、強度画像に位相画像(磁化率変化による位相差)を乗じて画像コントラストを強調する。位相差は高磁場装置ほど大きいので、S WI には30Tesla 装置が有用である。さらに3D グラディエントエコー法( GRE )法で撮像するので、2D GRET2*強調画像よりも磁化率に鋭敏で高い空間分解能が得られる。通常は最小値投影法(mIP)処理した画像を診断に用い、頭蓋内.脳組織においてはデオキシヘモグロビン化された静脈血を高精細に描出し、微量の出血も鋭敏に検出する。SWIの原理と臨床における有用性について総説する。

     

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